開催レポート 【チガラボ × Local】三陸の小さな蛤浜から考えるこれからの地域と暮らしのものさし
(投稿日:2023.7.27)

 こんにちは、チガラボスタッフのまっき〜です。

 7/23(日)に「【チガラボ × Local】三陸の小さな蛤浜から考えるこれからの地域と暮らしのものさし」が開催されました。

 ゲストは小漁師をしながら「浜の暮らしのはまぐり堂」を運営し、持続可能な集落づくりに取り組んでいらっしゃる亀山貴一さんです。

 

 

この企画は、6/17(土)-6/18(日)にかけて行われた宮城県石巻市の桃浦現地訪問ツアーで訪れたことがきっかけで生まれました。素敵なご縁がつながりひろがっていきます♬

↓ ツアーの開催レポートはこちらをご覧ください。
https://chiga-lab.com/news/report/10227/

 亀山さんは宮城県石巻市・牡鹿半島の入り口に位置する蛤浜(はまぐりはま)で生まれ育ちました。リアス式海岸にある蛤浜は海と森に囲まれた自然豊かな集落で、そこでの暮らしが幼い頃から大好きだったとのこと。「大きくなったらおじいちゃんみたいになる!」と思っていたほど慕っていたおじいさまは、何でも自分でやってしまう、暮らしや生きるための力と術と智慧をもっていらっしゃったそうです。亀山さんが後に始められた小漁というのは個人が小舟で行う沿岸漁業のことで、大量の漁獲や養殖ではなくその時々に獲れる魚介を扱うという、自然のめぐりの一部としての漁のようにも感じます。日本の過疎地域の課題は世界の先駆的課題と言われることがありますが、蛤浜での亀山さんの取り組みとおじいさまの生きる力と智慧に、未来の生きるものさしに対するヒントがありそうです。

 蛤浜は東日本大震災の津波によって壊滅し、2世帯人口5人に減ってしまいました。極限的な避難生活の中でも、都市部の避難所とは異なり、たとえライフラインが止まっても、自然の営みの中で暮らしてきた集落のおじいさん・おばあさんは、沢の水を使ったり山や海から食材を調達したり、かまどでご飯をたいたり、瓦礫でお風呂や水洗トイレを作ったり、助け合いながら逞しく過ごしていたそうです。とはいえ、地形が変わってしまうほどの震災により壊れてしまった家などはそのまま…。ご自身も大切なご家族を亡くされた亀山さんは、2012年に大好きな蛤浜の再生プロジェクトを立ち上げます。

 仲間も資金もノウハウもない中で、ビジョンを描いて手探りでできることから活動していくうちに、たくさんの賛同者が全国から集まります。瓦礫の撤去からDIYで築100年の自宅を改装し、2013年3月に「はまぐり堂」をオープンしました。当初、はまぐり堂はカフェとして営業していましたが、魚介やジビエなど地元の食材を活かしたメニューや古民家をリノベーションした空間が好評で、1日100人、年間で約15,000人が訪れる行列のできる人気店となったそうです。そして、行政も理解を示し、協力してくれる企業や学生も増え、セレクトショップやギャラリー、自然学校など様々な活動を展開していきました。

 順調そうに見えますが、ここで大きな転機が訪れます。豊かな蛤浜での暮らしとなりわいをつくっていくはずが、カフェの営業に追われて疲弊する日々、そして小さな集落はオーバーツーリズムとなってしまい、急激な変化によって地元の方々にも迷惑がかかることになってしまったのだそうです。これが亀山さん達の活動の方向性を考え直すきっかけとなり、単に交流人口や仕事を増やすだけではない、「地域にも喜ばれる仕組みづくり」を模索するようになりました。

 今では通常のカフェとしての営業ではなく、毎週土曜日完全予約制・時間交代制のランチ営業のみとなっています。また、ゲストハウスに滞在しながら浜の暮らしを体験し味わうライフシェアプランも始めました。「cafeはまぐり堂」から「浜の暮らしのはまぐり堂」になったのです。ほんの短いカフェ時間では生まれない対話や面白いアイデア、関係性が「一緒に、つくる・食べる・焚き火をする・漁に出る・森に行く」といった体験を通して紡がれていきます。それは、一過性でも消費でもない、蛤浜と長いおつきあいを続けるファンをつくると同時に、各地で蛤浜のような新しい働き方や暮らし方(ものさし)を模索していく、亀山さんがおっしゃる「次世代の百姓」のような生きる力を育む人々を増やしていく仲間づくりのようにも感じました。

 

 

 最初のビジョン①では蛤浜の地図上で「ここに何を建てて、ここをどうして」というような具体的な絵だったのが、次のビジョン②では森・里・海といったサステナビリティを目指すシステム図のようになっていたのが印象的でした。そして、今ではビジョンは描かないのだそうです。それは、「偶発的に起きる面白いことは自分の描いたビジョンをはるかに超えてくるから」だとのこと!!シビれました!!

 2014年に一般社団法人はまのねを設立して、地域の課題である獣害対策や荒れた山林の再生、資源管理に取り組み、地域に根ざした事業の立ち上げや担い手の育成を行っていらっしゃいます。雇用を増やすというよりも「立つ人」を増やしたいとのことですが、これまでにはまぐり堂やはまのねに関わったうちの9名が独立起業をされたそうです。一人一人の「やりたい」とその人らしらを尊重したなりわいづくり・暮らしづくりを大切にされているのだなぁということが伝わってきます。

 

 

 私は去年「ソース原理」という考え方と出会ったのですが、そこでは「すべての人は創造的であり、アイデアをもち、それを世の中で実現することができる。その創造的な活動をする人を「ソース」、<創造の源>と呼ぶ」と言っています。そして、ソースとは、自分につながり、世界が求めていることに耳を澄まし、アイデアを実現するために一歩足を踏み出した人のことです。その時にアイデアの実現に必要な協力者やリソースを引き寄せる重力場のような役割と、協力者たちが集う物理的な空間としての二種類の性質を持つ「クリエイティブ・フィールド」、<創造の場>というものが立ち現れるといいます。亀山さんのこれまでの道のりと、自分とつながったところから愛してやまないことをやり、そんな人々が集まる蛤浜のお話しを聞いていたら、このソース原理のことが思い浮かびました。

 ここでは書き切れないくらい示唆に富む亀山さんのお話しでした。ただ、地域や社会にある課題には簡単な解決策はありません。亀山さんのおっしゃるように、「これからの時代を『どう豊かに、安心して暮らしていくか』は場所に関係なく、考えていかなければならない」そして、「私たちはこれから都市や地方、業種などの垣根を越えて一緒に豊かな未来を共創していく場づくりに力を入れていきたいと思っている」というところにとても共感しますし、今回のチガラボイベントの場がそのような出逢いの場になったのではないかと思います。

 参加者のみなさんとのディスカッションでは、くらしのゆたかさとは?それを測るものさしとは?といった深い問いに対してそれぞれの感想や意見が交わされました。

  • ビジョン&ものさしは常にその時点の過程であり、完成することなく変化し続けるもの。
  • くらしのゆたかさは、日常にあるものを無くしてみる(電気を止める等)など、環境を変える実験によって体験できそう。
  • 人が持っているさまざまな経験やスキル(百姓度合い)、関係性(相関図)によって、生きる力が可視化できるかもしれない。

 交流会では、亀山さんに送っていただいた蛤浜の海と山の幸をチガラボのお料理チームに調理していただき、美味しい海と山の幸を堪能しました😋 食材は、穴子、しゃこ、つぶ貝、ひじき、いしがに、鹿のリブ!!それが、チガラボお料理チームの手によって、穴子の白焼き、しゃこのサラダ、しゃこ飯、つぶ貝のガーリク炒め、ひじき煮、ひじきのポン酢和え、ひじきのオムレツ、鹿のリブ焼きへと姿を変えました❣️

  

 美味しいお料理にみなさん舌鼓を打ちながら笑顔溢れる交流の場となり、と〜っても美味しく楽しい時間となりました😋はまぐり堂の活動や海と山の幸が気になる方は、是非蛤浜を訪れてみてくださいね。今年の秋にチガラボで現地を訪れるツアーが開催されるかもしれませんので、チェックしてみてくださいね!!

「浜の暮らしのはまぐり堂」
ホームページ :https://www.hamaguridou.com
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Instagram :https://www.instagram.com/hamaguridou/
参考図書:『すべては1人から始まる ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』トム・ニクソン、英治出版、2022年