開催レポート:【チガラボ2周年企画】『ソトコト』編集長・指出一正さんと語る、これからのソーシャル&ローカルなタクラミ
(投稿日:2019.2.11)

はじめまして。1月からインターンとしてお世話になっています、城田悠紀也です。2/3(日)に、「【チガラボ2周年企画】『ソトコト』編集長・指出一正さんと語る、これからのソーシャル&ローカルなタクラミ」が開催されました。

ゲストにお越しいただいたのは、ソーシャル&ローカルな話題を常に柔らかい視点で伝え続ける雑誌、『ソトコト』編集長の指出一正さん。昨年のイベント以来、1年ぶり4度目のご登壇です。

昨年までは、他地域の取り組みをご紹介いただきながら、茅ヶ崎のことも交えてお話しするというスタイルでしたが、今年は趣向を変えた企画として、プレーヤーとしての指出一正さんの立場で語っていただきました。

 

 

【ガリガリ君の大きさで】

指出さんが地域を訪れた際、大切にしていることがあります。それはものごとを“ガリガリ君の大きさで見る”ことです。ものごとをつい大きな視点で見がちな今の時代、小さな視点で見ることによって、今まで入ってきていた2次情報、3次情報がなくなり、今までよりも解像度が増すのです。

山と渓谷社出版の雑誌『Outdoor』の編集を務めていた頃にも、様々な地域を訪れていた指出さんですが、そのときは地域を“舞台”という大きな視点でしか見ていなかったそうです。

しかし、そのことに気づいた指出さんは『ソトコト』の編集を務めるようになってから、その地域の“演者”に注目するようになりました。

指出さんが地域を訪れる際、そこにイワナとタナゴが生息しているかという視点でその地域を見ているそうです。「この2種類が生息しているかどうかで、ローカルの豊かさがわかる。」これが指出さんの一つのモノサシになっているのです。

 

そして今、指出さんがプレーヤーとして取り組んでいることが4つあります。

【新しい求人サイト「イタ」】

かつて下北沢の駅にあった掲示板をモチーフにして作られた求人サイト、「イタ」。このネーミングには「板」と人がそこに「いた!」という2つの意味が込められています。

従来の求人サイトや旅行ガイドには、写真や地図などその場を実際に訪れるまでの過程の中に情報が多すぎると感じていた指出さんは、何か解決策がないかを探していたそうです。

そこで思いついたのが「イタ」。このサイトには写真や絵などの掲載はなく、その場所にたどり着くための必要最低限の情報しか掲載されていません。そうすることによって、実際にその地に自分の足で訪れ、人々に出会う感動を味わうことができます。

この「イタ」には、チガラボも掲載させていただいていますが、ここから1名の応募があり、なんと2月からスタッフとして採用になったのです!

 

【地域の編集学校 四万十川源流点校】

高知県津野町の四万十川源流点エリアで開催された、新たな価値をつくるエリアイノベーションの担い手を養成する講座「地域の編集学校 四万十川源流点校」。この講座では地域と関わる面白さを受講者に感じてもらうため、あえて東京では開講せずに高知県で開講するという試みがなされました。第1回の説明会では、開始5分前になっても参加者が誰一人来なかったため、内心は焦ったそうです。しかし、道に迷っていただけで、その後、40人もの人が集まってくれました。

地方開催は指出さんにとって大きなチャレンジでしたが、この講座の開催にあたり、“地域の現場の持つ魅力が人を引き寄せるのだ”という確信を得られたそうです。

 

【たなコトアカデミー】

舞台は和歌山県田辺市。この地域での、「関係人口」「地域づくり・地域の編集」「ローカルビジネス」「自分ならではの地域との関わり方」などに興味を持つ首都圏在住の方を対象に、田辺市との関係人口の創出を目指す講座が、「たなコトアカデミー」です。

指出さんはこの講座に、「田辺市の関係人口を増やす」、「受講した人が自発的に田辺市へ行ってもらいたい」などの意味も込められていたそうです。

その後、指出さんの思惑通り、東京での講座に参加された多くの方が実際に田辺市を訪れました。

 

【水循環とSDGs】

内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員、環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員を務める指出さんは、様々な場所で水循環の大切さについての講演をされています。もともと各講演でイワナやタナゴの写真を紹介しつつ話していたのを内閣官房の方が知り、「この方は水が好きそうだから」と指出さんを委員に選ばれたそうです。「好きなことを続けていれば、いつの間にかそれが仕事になっている。」という指出さんの言葉の意味がわかりました。

【質疑応答】

指出さんの発表の後、参加者の皆様が指出さんに聞いてみたいことをご質問いただきました。

Q:地域に入り込むにはどうしたらいいのでしょうか?

A:自分がその地域の方々と同じ立ち位置であることを見せることが必要です。自分の役職やできることを見せびらかすのではなく、「何か一緒にできることはありますか?」などのお声がけをし、その地域で自分ができることを住民の方々といっしょに考えることが大切です。また、「地域への入り方講座」をチガラボで開催しても良いと思います。

 

Q:ピアニストで、自分の練習風景を商店街などで公開する「スケルトーン」という活動をしています。“気軽に子供たちにピアノの演奏を聞いてもらい、初めて生の音楽に触れる体験にしてほしい”と考えています。“ただ練習しているだけ”というコンセプトをうまく伝えるにはどうしたらよいでしょうか?

A:巨大な段ボールの中で練習をし、子供が見える位置に穴を開けておくのはどうでしょうか。また、練習感を出すために橋の下で演奏しても面白いかもしれません。

 

【最後に】

指出さんが編集をする際に心がけていること。それは、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」という井上ひさしさんの言葉だそうです。

自分自身、最近、物事を大きな視点で見すぎていろいろな情報に惑わされてしまうことが多いと感じます。そんな時代の今こそ、”ガリガリ君の大きさ”という小さな視点持つこと、そして自分のモノサシを持つことが必要になってくるのだと思います。指出さんの「今あることに取り組み続けていれば、それがたまたま社会解決につながることがある」というお言葉聞き、まずは今、目の前にあることに全力で取り組むことが大切であると感じました。

ゲストの指出さん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!

 

▽参考URL▽

ソーシャル&エコマガジン『ソトコト』

https://www.sotokoto.net/jp/

 

求人サイト「イタ」

https://ita-sotokoto.net/