開催レポート:【チガラボ×Local】西粟倉村・牧大介さんと、森のうなぎを食べながら地域の仕事のつくりかたを考える会
(投稿日:2018.10.26)

「自分おこし」が地域の未来をつくる。

10月20日(土)、「【チガラボ×Local】西粟倉村・牧大介さんと、森のうなぎを食べながら地域の仕事のつくりかたを考える会」を開催しました。

「チガラボ×Local」シリーズは食べて・飲んで・話すことを通じて、さまざまな地域とのつながりをつくることを目指しています。

今回つながったのは、岡山県西粟倉村。人口1,500人、面積の95%を森林が占めるこの村は、「平成の大合併」においても独立した地域として生き残る道を選択しました。以降、行政・民間の立場を越えたさまざまな取り組みが功を奏し、この10年で約30社の事業が新たに生まれ、その売上合計は約15億円。ローカルベンチャー創出の先端地域として注目をあびています。

ゲストにお迎えしたのは、西粟倉村で「株式会社西粟倉・森の学校」と「エーゼロ株式会社」を創業し、林業、うなぎ養殖、移住・起業支援、人材育成など、いくつもの事業に携わる牧大介さん。西粟倉村のキーパーソンです。

本レポートでは、牧さんのお話の一部を紹介しながら、イベントのテーマである「地域の仕事のつくりかた」のヒントをお伝えしてみたいと思います。

「地域おこし」ではなく「自分おこし」

地域に関わろうとする人が「地域のため」という発言するときは、地域に受け入れてもらおう、自分のことを良く思ってほしい、というためであることが多いそうです。それよりも、熱量のある人たちが、自分の興味関心や問題意識に向き合うことが大切。まずは自分たちができることを自分たちなりに楽しむことが、結果としてそれまで地域になかった価値を足していくのかもしれません。

「地域は人の集合体なので、大切なのは『自分おこし』の積み重ねであり、地域の変化はその結果でしかない」という牧さんの言葉どおり、西粟倉村の「生きるを楽しむ」というキャッチコピーは、まさにそれを表現しています。

「いきあたりばっちり」

同じ仕事をしていても、やりがいを持って働ける人もいれば、そうでない人もいます。両者の違いは、起きていることに対してどのような意味づけをするかということ。。地域や関わる人にとっての前向きな意味づけがされることによって、やってみたことが「いきあたりばっちり」になります。

また、この時に大切なのは、火(前に進む力)をしっかりとおこせることです。牧さんは、「自分たちは『焚き火』をしているようなものだ」と例えています。「焚」という字になぞらえて、火種になる性質をもつ人(火・一次ワクワク者)が1人と、それを支える発火しやすい人(木・二次ワクワク者)が2人いれば火はおきます。結局は熱量の問題なのだそうです。

西粟倉村で2008年に始まった「百年の森構想(森を起点に持続可能な村をつくる構想)」も、小さく始めたことに後から意味づけが加わり、多くの人の協力を得て、形になりました。

「好きなことだから継続できる。継続するから本物になる。本物になるから生き残っていける。」※前・西粟倉村長の言葉

西粟倉村とエーゼロが運営する「ローカルベンチャースクール」は、総務省の「地域おこし協力隊」の仕組みを使い、3年間で起業を目指すプログラムです。採択の際に重視しているのは、その人の好きなこと・モノへの強い愛情や熱意を感じられるかどうか、純度の高いモチベーションを持っているかどうかなのだそうです。

例えば、日本酒のセレクトショップ&移動型居酒屋の事業で採択された「酒うらら」は、当初はネット販売すら予定になく、村内での事業だったため、その事業性は、牧さんにとっても未知数で理解できないものだったそうです。しかし、理解できないということは新しいということであり、なにより提案者の日本酒への思いは本物だと感じられたために採択。その後も事業は順調に発展しているそうです。

一般的に、事業は計画や予算からはじまり、人・モノを調達するプロセスを経ていきますが、「それだとやらされている感覚が強くなってしまう」と牧さん。西粟倉村では、「何かをやりたい」という思いを思った人から事業が生まれているのです。

移住ではない、地域との関わり方

イベントには、湘南地域内外から大学生や社会人が多く集まりました。地域に関わりたい人や農業に興味がある人、自分で事業を起こしたい人など、参加理由はさまざまで、質問タイムには多くの質問が牧さんに投げかけられました。

交流会では、「森のうなぎ」を使った料理をおいしくいただきました。このうなぎは、エーゼロさんが西粟倉村の廃校の体育館でじっくりと育てていて、温度管理には地域の木材加工で発生する廃材や削りかすをボイラーで燃焼した熱が使われています。うなぎの蒲焼・燻製、茅ヶ崎の野菜が食卓を彩りました。

調理を担当してくださったのは、料理研究家の丸山寛子さん。ご自身も、都内に住みながら西粟倉村との関わりを持ち続けている一人。以前は「移住しないと、本当の意味で地域のためにならないんじゃないか」と、西粟倉村との関わり方に悩まれていたそうですが、「都会で暮らしているからこそできることもある」と、今では西粟倉村の食材を使ったイベントを都内各地で開催しています。

▽「移住しないと意味がないと思ってた。」 私らしい、移住でも観光でもない西粟倉との関わり方。 | Through Me – いきるが、ひろがる
http://throughme.jp/idomu_maruyama/

西粟倉村に関わる人の熱い思いが積み重なって、地域内外で新しい価値が生まれています。まずは自分のワクワクをていねいに観察し、楽しみながら火を起こし続けていくことが、それぞれの地域で生きる私たちの豊かな未来につながっているのではないでしょうか。

ちなみにイベント前には、茅ヶ崎市赤羽にあるコミュニティ農園「EdiblePark茅ヶ崎」を訪れた牧さん。そこでニワトリと出会ったことがこの日一番うれしい出来事だったそうで、「西粟倉村でも鶏を飼いたい」と検討中だそうです(笑)。

楽しみながら、次々と新しいことを生み出していく西粟倉村のこれからが楽しみです。以上、開催レポートでした!